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食品添加物にも利用されるアセトアルデヒドと人体の関係

アセトアルデヒドと聞いて何を思い浮かべますか?その名前を知っている多くの人は、二日酔いによる吐き気や頭痛が浮かぶかもしれません。実際に、アセトアルデヒドは二日酔いの原因物質として知られていますが、生活の中で利用されている側面もあります。アセトアルデヒドの特性とアルコールとの関係、食品への利用についてご紹介します。

アセトアルデヒドとは

アセトアルデヒドは化学式C2H4Oで表される有機化合物で、無色の気体で揮発性があり、刺激性と窒息性の臭いがします。この臭気について、人が感じるかどうかの境界を表す「しきい値」は0.09mg/m3とされており、ごく少量で刺激臭を感じることがわかります。

アセトアルデヒドは揮発性が高いうえに引火点は-38℃と非常に引火しやすく、空気中で爆発することもあり、取り扱いには注意が必要です。400℃を超える高温になると分解され、メタンと一酸化炭素を生成する点も、この物質の危険度を高めています。

水を含む多くの液体に溶解する性質がありベンゼン、ジエチルエーテル、エタノールとも混和し、さらに反応性が高いため多くの物質と縮合・付加・重合などさまざまな反応を起こすのも特徴です。

アセトアルデヒドはヒトや高等植物の中間代謝物で自然界でも生成され、ガソリンエンジンの排気、ガスや燃料油を燃焼した際の煙、廃棄物の焼却などでも発生します。

また一方で、商業的に生産され、酢酸の原料や香料などとして使用されています。

アセトアルデヒドとアルコール

アセトアルデヒドという物質名を耳にする機会が最も多いのは、アルコールとの関係についてではないでしょうか。

ヒトがアルコールを口から摂取したとき、アルコールの20%は胃で、80%は小腸で吸収されます。こうして血中に吸収されたアルコールは大部分が肝臓に運ばれ、酵素によって分解が始まります。最初にADH(アルコール脱水素酵素)およびMEOS(ミクロソームエタノール酸化酵素)により、「アセトアルデヒド」へと分解されます。

このうちMEOSはアルコール量が多いときに活性化する酵素で、アルコールの摂取量や摂取頻度によって増加します。「アルコールに強くなる」というのはこのMEOSが増加しているからですが、肝臓には同様に負担がかかる点は留意しておかなければなりません。

ADHとMEOSによって生成された「アセトアルデヒド」を分解するのはALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)です。ALDHによりアセトアルデヒドは酢酸へと分解され、血液によって全身に運ばれます。酢酸は筋肉や脂肪組織で消費または蓄積されることで水と二酸化炭素に分解され、呼気や尿となって体外へと排出されます。

このようなメカニズムによってアルコールはアセトアルデヒドへ、アセトアルデヒドは酢酸へと分解されますが、アルコールもアセトアルデヒドも一挙にすべてが分解されるわけではありません。分解しきれなかったそれらは血中をめぐり、心臓を経由した後に再び肝臓へと戻り分解の過程が繰り返されるのです。

このとき、アセトアルデヒドが持つ毒性が人体に影響し、吐き気や頭痛といった二日酔いの症状が引き起こされます。これは、有害物質を体外にいち早く排出しようとする作用から胃のけいれんが起こることで吐き気がし、脳の血管が拡張することで三叉神経が刺激され、頭痛がするというのが定説です。

以上のように、アルコールを分解することで生成されたアセトアルデヒドは、二日酔いの諸症状を引き起こす原因物質です。この、身近に起こりがちな人体への影響にスポットライトが当たり、人体への有害性のみが知られるようになった経緯があります。

アセトアルデヒドの利用方法

前述のように二日酔いを引き起こしたり発がん性が確認されたりと、アセトアルデヒドは確かに人体への悪影響があります。このことから有害性という部分のみがクローズアップされてしまいますが、商業的に利用されるシーンもあります。

そのうちの一つが、有害性という面からは意外ともとれる「食品への利用」です。本来、アセトアルデヒドは天然界に存在し多くの果実や食品に含まれる物質です。りんご、バナナ、オレンジ、メロン、さくらんぼ、レモンなどのフルーツに存在するほか、チーズやバター、ヨーグルトなどの乳製品にも含まれます。

また、ビール、ワイン、蒸留酒といったアルコール飲料にはすでにアセトアルデヒドの状態で存在し、お茶やソフトドリンクにも含まれています。

アセトアルデヒドそれ自体はフルーティな香りを有していて、フルーツの香りを再現しようとしたときには非常に有効です。欧米では清涼飲料やキャンディーなどの香料として利用され、さまざまな食品に添加されてきました。

日本においては、「アセトアルデヒドは有害」という認識が先行していたため、食品への利用は長年禁止されていました。しかし、欧米で一般的に使用されていること、国際的な流通により食品の流通も多様化していることなどから、厚生労働省を中心に国際的に汎用(はんよう)されている食品添加物について見直す動きが活発化してきました。

こうした流れから、平成14年には厚生労働省の機関食品衛生審議会食品衛生分科会によって、アセトアルデヒドの食品利用が審議されることになりました。(参考:アセトアルデヒドを添加物として定めることに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)|厚生労働省

このなかでは、アセトアルデヒドの食品添加物としての利用に一定の範囲内で安全性が確認されたと評価されています。

発がん性についてはラット試験でがん発生が認められたものの、発生は散見的であったため、人に対する発がん性があるかもしれないという評価にとどまりました。ただし、これは血中に直接投与した場合の試験であり、経口で体内に入った場合は大部分が肝臓で代謝もしくは幹細胞の膜表面で除去されることから、循環血中に入る量は極めて少ないことがわかっています。

こうした試験と評価から、アセトアルデヒドを香料として使用することに対する安全性には問題がないという評価が優勢になりました。

平成15年には、厚生労働大臣から食品安全委員会への食品添加物の健康影響評価依頼があり、翌16年からは食品安全委員会添加物専門調査会が重ねて開催されました。平成17年には国民からの意見聴取、アセトアルデヒドの食品添加物の指定に関する部会の報告などを経て、平成18年にはついに食品添加物としての指定が了承されました。(参考:アセトアルデヒドの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)|厚生労働省

このような経緯を経て、現在ではアセトアルデヒドは香料としての使用が認められ、認証された食品添加物となっています。

人を苦しめる一方で生活にも溶け込んでいる

アセトアルデヒドは世界中で多くの人を苦しめる二日酔いの原因物質であることが判明しています。また、発がん性についても、国際がん研究機関(IARC)の定める「人体に影響する可能性がある」とされる2Bグループに分類されています。その一方で、経口での摂取では人体に影響しにくいことも判明しており、世界的には広く香料として使われています。このように、アセトアルデヒドは人体への影響があるものの、その原因が判明している現代だからこそ有効に活用できる、暮らしの中にも溶け込んでいる物質とも言えます。

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