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どう進む?水素基本戦略によって加速する水素社会に向けた取り組み

どう進む?水素基本戦略によって加速する水素社会に向けた取り組み

「水素基本戦略」、水素を新たなエネルギーとして活用する社会の実現に向けた戦略が動き始めました。水素基本戦略とはどういった内容を示したものなのでしょうか。水素基本戦略の概要とそれを受けて始動した取り組み、水素活用に欠かせないアイテムが脚光を浴びている理由などを紹介します。

水素基本戦略によって目指す水素社会

これからの時代は、社会全体でエネルギーの使い方を大きく変えていく必要性が高まっています。そういったエネルギーの変換に大きく関わっているのが水素基本戦略です。水素基本戦略とはどういったものなのか、その概要から見ていきましょう。

水素基本戦略とは

水素基本戦略は、2017年12月に開かれた「第2回再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議」において決定されました。

これは、2050年を視野に入れ水素をエネルギーとして活用するための方向性やビジョンを示したもので、2030年までの具体的な行動計画も提言しています。政府一体となって取り組むだけでなく、官民が目標を共有する意味合いも含まれています。

世界に先駆けて水素社会を実現し日本がカーボンフリーを牽引していく存在となることを大きな目標とし、その目標実現のための取り組みを示しています。

背景には高まる水素への期待

水素基本戦略の策定に関して、その背景には日本の抱えるエネルギー事情と、世界が直面している環境問題が深く関わっています。

約94%を海外化石燃料に依存し、エネルギー自給率は6~7%と低い我が国において、エネルギーの自給自足に向けた取り組みは国益に直結する重要な課題です。自給自足の割合を高めるためには国内でも作れるエネルギーを開発する必要があり、国内エネルギー生産は長年の目標でもあります。

また、京都議定書によって定められた温室効果ガスの削減に関して、CO2排出量を2013年度比-26%とするとしている削減目標が2030年に迫っています。これに加え、長期的な大幅削減が2050年までの目標として掲げられており、温室効果ガス削減に向けた大きな前進のきっかけも求められています。

こういった背景から、エネルギーの大きな変革が必要とされています。そこで、使用する新たなエネルギーとして注目されたのが水素です。

水素は国内でも容易に製造できるため自給自足が可能で、エネルギーとして利用したあともCO2を排出しません。

水素エネルギーの割合を増やすことで、エネルギー自給率の増加、低炭素化、産業振興、世界でのイニシアチブ確保など、多くの課題解決に向けた前進が期待されています。

水素基本戦略の内容と戦略への取り組み

水素エネルギーへの変換は、エネルギーの自給自足と温室効果ガス削減だけでなく、さまざまな効果を同時に実現すると期待されています。水素エネルギーへの変換とその方向性を示した水素基本戦略の内容とはどういったものでしょうか。

水素基本戦略で掲げる10の柱

水素基本戦略のなかでは、水素社会を実現するために必要な取り組みとして、次の10の条件を達成することを掲げています。

  • エネルギーとしての水素の低コスト化
    水素の調達および供給に関してコスト低減が不可欠であり、水素を大量調達するアプローチと国際サプライチェーンの構築を同時進行する必要があるとしています。2030年に商用利用可能な規模でのサプライチェーンを構築し、30円/Nm3程度のコスト実現が当面の目標です。将来的には20円/Nm3を目指すとしています。

※1Nm3(ノルマル立方メートル)は標準状態(0℃・1気圧)における1m3のガス量

  • 水素サプライチェーンの開発
    効率的な水素の輸送と貯蔵のための技術開発を行い2030年頃に液化水素サプライチェーンの商用化を目指します。
  • 再生可能エネルギーから水素への変換技術実用化
    国内再エネ由来水素の利用拡大と、地域資源活用と地方創生を同時進行で行っていくのが目標です。その手段としては、再エネを水素に変えてエネルギーを貯蔵する「Power-to-gas技術」が有望視されています。また、地域資源活用による低炭素な水素サプライチェーンの構築支援を行い、地域の水素需要拡大や需要最適化、設備や運用の低コスト化を促進する考えです。
  • 電力分野での水素発電実用化
    水素発電の利用を拡大し2030年頃の商用可を実現、17円/kWhのコストを目標としています。将来的に既存のLNG火力発電と同等のコスト競争力を持つ発電手段としての利用を見据えています。
  • 燃料電池車の商用化と普及
    燃料電池車(FCV)は水素基本戦略のなかでも特に注目されている分野といえるかもしれません。2020年代後半までに水素ステーション事業の自立化を目指し、2030年までにFCV80万台の普及を目指すとしています。このほか、FCバス、FCフォークリフト、FCトラックなど商業車両や産業車両についても導入の目標を定めています。
  • 熱源燃料としての水素活用を増加
    電化が困難なエネルギー利用分野において水素を燃料として利用することで、低炭素化を図ることが可能です。また、化石燃料を使用して製造している水素をCO2フリー水素に置き換えることも含まれています。
  • 燃料電池の活用範囲を拡大
    エネファームや集合住宅、寒冷地などでの燃料電池技術を活用し、水素社会へのシフトを加速させます。2030年以降はCO2フリー水素を燃料として使う純水素燃料電池コージェネへの以降も視野に入れています。
  • 水素に関する革新的技術の開発
    2050年を見据え、高効率な水素製造技術とエネルギーキャリア、燃料電池の開発など革新的技術開発が必要であり、関係省庁連携のもとシームレスに実施していくとしています。
  • 国際標準化への取り組み
    国際的な枠組みを活用し国際標準化に取り組みます。
  • 国民の理解促進と地域連携
    水素社会の実現には水素の安全性や利用意義についての理解と認識共有が必要であり、適切な情報発信を行っていく必要があるとしています。

これら10の柱を基本戦略とし、水素社会の実現に向けた取り組みを進めていくのが水素基本戦略の具体的な内容です。

民間企業による団体「水素バリューチェーン推進協議会」の取り組み

水素基本戦略に沿って水素エネルギー普及を進めるのは政府や関係省庁だけではありません。民間での推進も必要です。

水素基本戦略を受け、トヨタやENEOSなど民間企業9社が「水素バリューチェーン推進協議会」を発足しました。この協議会の参画企業には約90社が名を連ねています。

水素バリューチェーンの構築、水素社会の実現と実装に向けた動きの加速、資金供給の仕組みづくり推進を重点として活動するとしています。

官民連携のもと水素社会実現に向けた取り組みを進める地盤ができつつあります。

自治体も独自の取り組みを進める

全国の自治体でもすでに水素エネルギーに関する取り組みが進められています。

和歌山県では水素基本戦略を受け、独自の取り組みとして「わかやま水素社会推進ビジョン」を策定しました。国や産業界の動向に合わせ、フェーズを3つに分け水素エネルギー普及の取り組みを進めるロードマップも作られています。また、和歌山県の公用車として燃料電池車を導入し、水素社会の将来像を理解共有していく足がかりとする考えです。

北海道も「北海道水素社会実現戦略ビジョン」を策定、水素社会の実現により温室効果ガス削減とエネルギーの地産地消に取り組む考えを示しています。北海道は積雪寒冷地であることから、道民一人あたりのCO2排出量が全国に比べて高いことをあげ、CO2削減を重要課題としています。一方で、再エネに関しては全国有数のポテンシャルを持ち、再エネ由来水素製造によりエネルギー自給率の向上と道内経済活性化に大きな貢献が期待されるとしています。

市町村単位でも取り組みを始めている自治体があります。神奈川県川崎市は「川崎水素戦略」を策定、「川崎臨海部水素ネットワーク協議会」を発足し、水素社会を実現した未来型環境・産業都市を目指す方針を打ち出しています。

2030年、水素社会の実現に向けて

水素基本戦略の概要と策定の背景、具体的な内容、各方面での動向を紹介しました。

2030年を目安の年として目標を定めた水素基本戦略が動き出しました。政府、自治体、民間がそれぞれ水素社会の実現に向けて取り組みを始めます。目標とする水素利用の実用化にはまだ多くの課題がありますが、世界において日本が水素社会実現のリーダーを目指すためには、さらに開発を加速させていく必要があります。2030年までに社会はエネルギー面において大きな変貌を見せるかもしれません。

水素社会実現にむけたNISSHAエフアイエスの取り組み

水素基本戦略を軸とした動向に貢献できるよう、NISSHAエフアイエスも水素をエネルギーとして活用するためのソリューション開発に取り組んでいます。

燃料電池用の水素ディテクター(接触燃焼式ガスセンサー搭載)

燃料電池の利用については、水素漏洩を検知する水素ディテクターの装着が義務付けられています。

NISSHAエフアイエスの水素ディテクターは、水素ガスの漏洩検知用センサーとして、市販される燃料電池車に世界で初めて搭載された実績を持ちます。高い応答性と優れた水素ガス選択性により、水素漏洩があった場合には高速検知し大量漏洩を防止する役割を担います。

水素社会の実現には水素に対する安心と安全が不可欠です。高い信頼性を持つ水素ディテクターの供給により、水素エネルギー活用の可能性を前に進めるよう貢献しています。

水素ディテクターについてさらに詳しい情報は、つぎのバナーから製品ページをご覧ください。

水素ディテクター

水素ガス分析用のSGC

NISSHAエフアイエスの提供する水素ガス分析用センサーガスクロマトグラフ(SGC)は、簡単な操作で高精度の測定が可能です。小型で軽量なためどこにでも持ち運び可能で、短時間で分析できるためリアルタイムな計測が可能です。

水素社会の実現を想定すると、さまざまな場所で水素の検出または濃度測定が必要になると考えられます。そのとき、NISSHAエフアイエスのSGCが大いに活用されることにより、安全で高効率な水素エネルギー利用が進むと考えています。

SGC(センサーガスクロマトグラフ)についてさらに詳しい情報は、つぎのバナーから製品ページをご覧ください。

SGC センサーガスクロマトグラフ

半導体式ガスセンサー(センサー単体:SB-19-00とSB-42A-11)

NISSHAエフアイエスの半導体式ガスセンサーは長年多くの分野で使用されてきた実績を持つ超小型ビードタイプです。

SB-19-00は水素に対して高選択性の特長をもっており、SB-42A-11は被毒性に優れています。

いずれのセンサーも、低消費電力・長寿命・高信頼性・低価格といった従来の半導体式センサーが持つ特徴に加え、高感度といった性能がプラスされています。

半導体式ガスセンサーはセンサー単体での供給を行っております。ポータブル製品だけでなく、燃料電池車や燃料電池コ・ジェネレーションシステムにおける水素漏洩検出に最適な性能を発揮しますので、自社設計されている場合にご活用ください。

 

半導体式ガスセンサー用モジュール(FIS3000シリーズ)

SB-19-00、SB-42A-11などの半導体式ガスセンサーを組み込んだセンサーモジュールです。

この半導体式ガスセンサー用モジュールは、燃料電池向けの水素ディテクターよりも低濃度検知が可能です。また、比較的安価なため用途に応じてお使いください。

半導体式ガスセンサーのカタログはこちらからダウンロードできます。

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