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エチレンを原料とするさまざまな有機化合物とその用途

私たちの身近にある「エチレン」。エチレンはどのように姿を変え、どういった目的で使われているのでしょうか。今回はエチレンの用途や、エチレンと食品の関係を見ていきます。

エチレンとは

エチレンは分子式C2H4で表されるオレフィン系炭化水素です。融点は-169.1℃、沸点は-103.7 ℃と、常温では気体状を保ちます。気体比重は0.98と空気に近く、空気室中で天地どちらかにたまることはありません。見た目にも無色であり区別はできませんが、かすかに甘い香りがあります。

工業的な製法として、エタン・プロパン・ブタンなどを熱分解する方法、石油ナフサをクラッキングする方法がありますが、そのなかでも管式加熱炉法と呼ばれる分解蒸留により製造するのが一般的です。

引火性・発火性があり取り扱いには十分な注意が必要ですが、さまざまな化学繊維や有機化学製品の原料となり、現代文明になくてはならない物質です。

エチレンを原料とする有機化合物と用途

エチレンは、日常生活で利用する身の回りのものから多くの産業で使われる専用品の材料まで、さまざまなものを生み出す際の原料となっています。エチレンを原料として生み出される有機化合物にはどのようなものがあるのでしょうか。また、どのような用途で使われているのでしょうか。代表的なものをご紹介します。

低密度ポリエチレン

エチレンを原料として生成されるポリエチレンのうち、高圧重合法によって製造されたものを低密度ポリエチレンと言います。

低密度ポリエチレンは押出成形がしやすく、フィルム状に加工しやすい特性を持ちます。また、80~90℃で軟化し、110~120℃で溶融する低音での熱可塑性も特徴の一つです。ヒートシール性に優れ、透明性・防湿性を持ちます。

安価に製造できるため、さまざまな用途に使われますが、代表的なものとして厚手の透明ポリ袋や大型のパレットカバーなどに使われています。

高密度ポリエチレン

高圧重合法で製造される低密度ポリエチレンに対し、中圧・低圧の重合法で製造されるものです。軟化温度は120℃、融点は150℃と、低密度ポリエチレンと物性は異なり比較的高温の熱可塑性を持ちます。

半透明で引張強さに優れ、薄いフィルムでも強度を保てること、低密度ポリエチレンの約2倍の防湿性・シール性があることなどが特徴です。

主にレジ袋に代表される半透明ポリ袋に使用されています。

塩化ビニルモノマー

エチレンと工業塩を反応させた後に熱分解して得られるのが塩化ビニルモノマーです。クロロエチレンの別名であり、略して塩ビモノマーと言われることもあります。

塩化ビニルモノマーの沸点は-13℃で、常温条件下では無色の気体。エーテル臭や強い引火性などの特徴があり、通常は加圧することで液化させ、液体で貯蔵・運搬します。

塩化ビニルモノマーからはポリ塩化ビニル・塩化ビニルなど、さらにさまざまな有機化合物が作られ、日用品や衣類、断熱材や保護剤、電線被覆、水道パイプ、農業資材などあらゆる分野で利用されています。

エチレンオキサイド

エチレンと酸素を反応させて製造される、環状エーテルの一種。エチレンオキシド、エポキシエタン、オキシラン、オキサシクロプロパンなどの別名があります。

エチレンオキサイドの沸点は10.4℃で、無色の気体または液体です。エーテル臭があり、水と混和する性質があります。

滅菌力が高くプラスチック製医療用器具の滅菌剤として使われたり、化学反応により界面活性剤やエチレングリコール、エタノールアミンなどを生成する原料になったりと、日用品から医療分野まで幅広く使われています。

アセトアルデヒド

アルコール飲料を摂取した際に体内で作られ、体調を悪くする有害物質として知られるアセトアルデヒドですが、工業的にエチレンから作られ産業利用されています。高濃度では刺激臭があり、低濃度ではフルーティーな香りを持つ無色で揮発性の物質です。

酢酸の原料や魚の防腐剤、防カビ剤、写真現像薬品、還元剤などさまざまな用途に使われています。

スチレンモノマー

スチレンモノマーはスチロール、フェニルエチレンなどの別名があり、スチレンと呼ばれることもあります。エチレンとベンゼンから合成されるエチルベンゼンを脱水素することにより製造されます。

融点は-30.6℃、沸点は145.2℃で、常温条件下では芳香のある無色の液体です。加熱や過酸化物との反応により重合しやすく、重合することで粘度が高くなる性質があり、重合が進むと固体状になることもあります。

ポリスチレン樹脂やABS樹脂、合成ゴムの原料となり、この3種の樹脂はさらにさまざまな姿へと加工できるため、無限と言えるほどの用途があります。

エチレンと食品の関係

このようにエチレンから作られる有機化合物はあらゆる分野で使われていますが、エチレンそのものにも特殊な作用があります。

エチレンは常温では気体状で「エチレンガス」と呼ばれており、エチレンガスは工業的に生成されるだけでなく、自然界でも発生しています。その発生源は、野菜や果物などの植物です。

野菜や果物由来のエチレンガスは植物ホルモンの一種で、成熟ホルモンや老化ホルモンなどの別名があります。花の受精タイミングや果実の結実過程、完熟し腐敗していく過程で多く発生し、植物のエイジングを進める役割を持っているものです。

果実や野菜を収穫した後もエチレンガスは出続けるため、保管・運搬中でもエイジングは進んでいきます。エイジングが進むと食べごろを通り越して腐敗してしまう可能性があるため、エチレン除去剤を使用して鮮度を保つ方法が取られることもあります。また、エチレンガスは8℃以上の環境で発生しやすいとも言われ、エイジングを防ぐには貯蔵時の温度管理も重要であるとされています。

一方で、こういったエチレンガスの特性が利用されている場面もあります。出荷まではガスを除去しておき、出荷時にガスを投入することで追熟させる方法です。

例えば、バナナはまだ青く硬い状態で輸入されます。これは、船便のような長期の輸送において、熟した状態で運搬すると傷んでしまう可能性があり、害虫もつきやすくなります。そこで、未熟の状態で輸入し日本でエチレンガスにより追熟させ、完熟状態で売り場に並ぶようにしているのです。

また、エチレンガスには発芽を抑える作用があることも分かっています。これを利用しているのが、ポテトチップス用のじゃがいもの保管・運搬の場面です。

じゃがいもは発芽してしまうと芽を除去しなければならず、加工時の効率が悪くなります。しかし、発芽させないように低温で保管すると糖度が上がりすぎてしまい、揚げたときに黒く変色する原因となります。そこで、エチレンガスにより発芽を抑えつつ糖度の上昇も防くのです。

このようにして、エチレンガスは野菜や果実の出荷時期の調整に活用され、食品の流通を支える役割も担っています。

エチレンは幅広い用途で人の暮らしと密着している

エチレンの用途と特徴についてご紹介しました。エチレンガスは、日常生活に欠かせないものや工業品・医薬品の製造過程に置いて欠かせないものの原料となっています。また、植物のエイジング作用を利用して出荷時期をコントロールし、食にも深く関わっています。このように幅広い用途を持つエチレンは、人々の暮らしに密着している物質の一つと言えるでしょう。

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