ブログ

エチレンガスとはなにか?青果物の成長や鮮度への影響も解説

エチレンガスとは野菜や果物の成長に欠かせない大切なものですが、上手に管理しないと、それらの鮮度を損ない、最終的には腐敗させてしまう存在でもあります。そこで今回は、野菜や果物の鮮度保持のために知っておきたい、エチレンガスの特徴とその対策方法についてご紹介します。

エチレンガスとは

エチレンガスは野菜や果物などが分泌する植物ホルモンの一種で、自らの熟成を促す働きがあります。リンゴが赤く色づいたり、バナナが柔らかくなったり、桃が甘くなったりする過程にも、エチレンガスが欠かせません。

空気中に存在するエチレンガスの成分は、それを分泌した野菜や果物の周囲にある野菜や果物にも影響を与えます。例えば、バナナやキウイフルーツをエチレンガスの生成量が多いことで知られるリンゴと一緒に保管すると早く熟成するのは、そういった理由からです。

しかし熟成と劣化・老化は表裏一体。完熟後もエチレンガスの分泌が続くと、野菜や果物が熟成し過ぎてやがて劣化し、最終的には腐敗につながります。前述したように空気中のエチレンガスは周囲の野菜や果物にも影響するため、保存方法には注意が必要です。

種類別エチレンガスの生成量と感受性

エチレンガスの生成量や、エチレンガスへの感受性は、野菜や果物の種類によって大きく異なります。

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構などのデータから、私たちに馴染み深いいくつかの野菜や果物について、エチレンガスの生成量とエチレンガスへの感受性をリストにしました。

ご覧のとおり、エチレンガスの生成量が多いのは、リンゴやメロン、西洋梨、完熟のトマトなどです。トマトやバレイショのように、熟成段階によってエチレンガスの生成量や感受性が変化していくものもあります。また、同じメロンでも、皮に網目模様のあるネットメロンとその他のメロンで異なりますし、メロンに限らず、品種によっても違ってきます。

エチレンガスの生成量と感受性には相関関係はなく、前述のキウイフルーツは自らのエチレンガスの生成量は少ないため、感受性の高さを生かして、生成量の多いリンゴなどと一緒に保存することで熟成が進むというわけです。

繰り返しになりますが、必要以上にエチレンガスの影響を受け続けると、劣化・腐敗につながります。そのため、例えばカリフラワーやキャベツ、キュウリ、バナナ、桃といった感受性が高い野菜や果物を取り扱う場合は、保存環境や輸送環境のエチレンガス濃度を、よりシビアに管理する必要があるのです。

<野菜や果物のエチレンガス生成量と感受性>

  • リンゴ           生成量 多  感受性 高
  • バナナ           生成量 中   感受性 高
  • 桃             生成量 多   感受性 高
  • キウイフルーツ       生成量 少   感受性 高
  • メロン (ネットメロン)   生成量 多   感受性 中
  • メロン (その他)      生成量 中   感受性 高
  • 西洋梨           生成量 多   感受性 高
  • トマト (完熟)       生成量 多   感受性 低
  • トマト (緑熟)       生成量 極少  感受性 高
  • バレイショ (未熟)     生成量 極少  感受性 中
  • バレイショ (完熟)     生成量 極少  感受性 中
  • カリフラワー        生成量 極少  感受性 高
  • キャベツ          生成量 極少  感受性 高
  • キュウリ          生成量 少   感受性 高

[参考]
農研機構 野菜茶業研究所

UC DAVIS Postharvest Technology など

エチレンガスによる劣化への対策

エチレンガスが野菜や果物の鮮度に影響することがわかって以来、それらを取り除き、悪影響をなくすための研究が続けられてきました。それらの技術は、「エチレンガスを空気中から取り除く」と「エチレンガスを無害な物質に分解する」の2種類に分類されます。さらにエチレンガスを分解する技術は、手法がいくつかに分かれます。

エチレンガスを空気中から取り除く技術

エチレンガス除去剤として、大谷石やゼオライト、炭酸カルシウム、過マンガン酸カリウムなどの多孔質材料が使われています。これらは素材の穴にガスの成分を吸着することで、空気中のエチレンガス濃度を下げてくれるというものです。

さらに、より効率よくガスを吸着し、コストパフォーマンスにも優れた新素材の開発が今も続けられており、同時に、そういった素材をフィルム素材に練り込んだ、鮮度保持包材の開発も進められています。

エチレンガスを無害な物質に分解する技術

エチレンガスを無害な物質に分解する技術には、次のようなものがあります。

エチレンガス分解除去剤の活用

エチレンガスの分解には、酸化力の強い金属成分による分解除去剤がよく用いられます。エチレンガスは分子式C2H4、構造式 CH2=CH2。二重結合で結ばれた炭素2個を持つ炭化水素なので、二酸化炭素と水に分解することができます。これらなら大気中に含まれる成分ですから、野菜や果物自体にはもちろん、それらの運搬や保管、販売などの作業に携わる人の体にも悪影響を与えません。

分解除去剤の技術もやはり、一部の鮮度保持包材に練り込まれるなどの形で活用されています。

ただし吸着方式の除去剤も分解方式の分解除去剤も、エチレンガスの吸着量や分解量に限りがあります。除去材はエチレンガスの成分を吸着するたびに多孔質の穴がふさがって吸着能力が落ちていきますし、分解除去剤はエチレンガスと化学反応を起こして別の物質に変わるためです。

そのため、これらは一定期間使用すると交換が必要になります。長時間輸送の現場などでは吸着量や分解量が不足し、輸送距離や輸送にかかる日数によってはエチレンガスを取り除く効果が十分に得られません。

オゾンによる分解

エチレンガスはオゾンによる分解も可能です。オゾンを使えばエチレンガスを分解すると同時に腐敗などの原因となる細菌や酵母、カビの殺菌もできるため、単にエチレンガスを除去するよりも高い鮮度保持効果が期待できます。しかしオゾンは濃度測定が難しい気体で、濃度管理を誤ると輸送業務従事者などの人体に悪影響を及ぼす可能性もあります。そのため、簡単には導入できません。

エチレンガス分解触媒

近年、エチレンガスの分解を促す触媒の研究も進んでいます。

例えば北海道大学で開発された「メソポーラスシリカ担持白金触媒」は、メソポーラスシリカという細かい孔が多数整列して開いている素材にプラチナの粒子を固定したもので、酸素20%、0℃の環境下で50ppmのエチレンを0.1ppm未満のレベルになるまで分解してくれることがわかっています。また、前述の分解除去剤と異なり、長期間にわたって交換の必要がない利点もあります。

触媒によって促された化学反応で生成された水分により、触媒の表面が濡れてきたら、加熱してその水分を取り除くだけで再び元通り機能します。触媒といえば、紫外線や可視光を照射することで化学反応を促す「光触媒」がありますが、プラチナ触媒は光触媒と違って光の照射などの工程も必要ありません。この手軽さから、大手メーカーの家庭用冷蔵庫にも採用されています。

状況に応じた適切なエチレンガス対策を

エチレンガスは目には見えないものの、野菜や果物の状態に大きな影響を及ぼします。青果物をできるだけ長く新鮮な状態で保存するには、エチレンガス対策が欠かせません。こちらではエチレンガスに関して知っておきたい基礎的な知識を、まとめてご紹介しました。

関連製品

低濃度ガス分析装置 センサーガスクロマトグラフSGEA-P3
エチレン、アセトアルデヒド、エタノールなど、植物が放出する低濃度ガスをリアルタイムに測定します。