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次世代モビリティ-水素自動車(燃料電池車)のメリットと課題

次世代モビリティ-水素自動車(燃料電池車)のメリットと課題

次世代の自動車社会はどう変化していくのでしょうか。温室効果ガスの排出量、いつかは枯渇する石油エネルギーの問題など、現在の自動車社会には多くの課題があります。そのようななかで、注目されているのが水素を使う水素自動車(燃料電池車)です。水素自動車(燃料電池車)の仕組みやメリット、今後解決していかなければならない課題、政府による取り組みなどを紹介します。

注目集める水素自動車、その背景と仕組み

近年自動車と地球環境の関わりについての研究が進むなかで、水素自動車が注目を集めています。これからの自動車のあり方を考えるうえで、水素自動車には何が期待されているのでしょうか。

未来の自動車社会のドアを開く鍵は水素エネルギー

最近「モビリティの未来」といった表現がよく聞かれるようになりました。

これまでの自動車の進化を考えると、自動車が普及してから2000年までは、自動車の使いやすさや内装・外装の充実に焦点が当てられ発展してきました。豪華さや走行性能、所有する喜びを満たす方向での追求が行われてきたと言えます。

しかし2000年を境に、自動車の進化の方向は、走る乗り物としての根幹である「走るための原理」に着目され、変化しています。

電気式ハイブリッドカーが続々と発売され、EV(電気自動車)も発表、市販されています。また、そういった流れから、蓄電池によって100%電気を動力源とするEVが普及する未来を想像する人もいるでしょう。しかし、電気式ハイブリッドカーではゼロエミッション・カーボンフリーを実現できるとは言えません。また、EVは「可動性」「動きやすさ」「移動の快適性」といった観点から考えると、長い充電時間が課題となります。

そこで注目されているのが、「水素エネルギー」です。水素エネルギーは埋蔵エネルギー資源や温室効果ガスの問題においても有効なことから、今後の普及に大きな期待が寄せられています。

限定的ではあるものの、すでに水素をエネルギーとする自動車は市販されています。

水素をエネルギーとする自動車は2種類

水素をエネルギーとする自動車には、水素をエンジン(内燃機関)で直接燃焼させ駆動するものと、水素を使った燃料電池で発電し、モーター(電動機)によって駆動するものの2種類があります。

どちらも単に「水素自動車」と呼ばれることがありますが、正確には前者を「水素エンジン車」、後者を「燃料電池車(FCV=Fuel Cell Vehicle)」と呼び分けています。

水素エンジン車のベースとなる構造は従来のガソリン車やディーゼル車と同様の仕組みです。これまで蓄積されたエンジンについての技術を応用できるため、大きなコストをかけずに実現できると考えられてきました。しかし、ガソリンと比べたときの水素の着火性の高さや発生エネルギーの低さなどの問題から、開発は難航しています。また、エンジンは燃焼室内で気化燃料に点火する必要がありますが、「水素+火=爆発」というイメージが強く、人々の拒否感が強いことも大きな課題です。

一方燃料電池車は、モーターでの駆動を基本とした仕組みで、電気式ハイブリッドカーやEVで培った技術が応用されています。点火の必要がないことから安全面での懸念が少なく、また効率性も高いことから、一層期待されています。

この記事では、主に水素自動車(燃料電池車)の紹介をしています。

水素を使って発電する燃料電池とは

前述のとおり、水素をエネルギーとする自動車のうち、水素自動車(燃料電池車)に対する期待が高まっています。では、燃料電池はどういった仕組みで水素をエネルギーへと変えているのでしょうか。

燃料電池の原理と仕組み

簡単に言うと、燃料電池の原理は、水の電気分解の逆です。水に電気を流すと水素と酸素に分解されますが、燃料電池では、水素と酸素を反応させて水と電気を生み出します。

基本的な仕組みとしては、電解質を挟んだ2つの電極の片側に水素を供給し、もう片側の電極には酸素を供給します。この水素を供給する側を燃料極、酸素を含む空気を供給する側を空気極と呼びます。水素のイオン化によって放出された電子が電流となり、水素イオンと酸素イオンの結合によって水になる仕組みです。このように化学反応を起こし、水と電気を生み出すのが燃料電池の基本的な仕組みです。

水素の補充方法としては、いくつかの方式があります。直接水素ガスを充填する方法、水素以外の燃料を補給して車載改質器によって水素を製造する方法、水素を吸蔵させた金属から水素を取り出す方法などです。

自動車向けの水素補給方法として、現状では直接水素ガスを充填する方法が、エネルギー効率や充填量から最も有利と考えられています。

燃料電池の応用の可能性

CO2を代表とする温室効果ガスは、家庭用自動車の排気ガスだけの問題ではありません。そのため、燃料電池は家庭用の自動車だけでなく、他でも応用が期待されています。

例えばバスやタクシーなどの業務用自動車、フォークリフトや建設機械などの産業用車両など、従来化石燃料を使用していたさまざまな乗り物への応用です。また、船や鉄道車両など大型の乗り物、非常用電源やモバイルバッテリーなどの用途としても開発が進められています。

さらに燃料電池は多分野において代替エネルギーとなり得るため、さまざまな方向から研究が進んでいるのです。

水素自動車(燃料電池車)のメリット

以上のような特徴を持つ燃料電池を搭載した水素自動車(燃料電池車)には、次のような効果が期待できます。

排気ガスがゼロ

燃料電池は水素と酸素の化学反応により電気と水を生み出します。この原理から、理論的に排出されるのは水だけで、排気ガスはゼロです。そのため有害なガスやCO2を出さない自動車が実現でき、温室効果ガス発生を大幅に削減できると考えられています。

ガソリンに比べ高いエネルギー効率

ガソリン内燃機関の自動車に対し、水素自動車(燃料電池車)のエネルギー効率は2倍ほどと考えられています。こういった高いエネルギー効率により、多くの経済的な効果が期待できます。

短時間充填で長い航続距離

充電に数時間かかるEVと違い、水素を使う水素自動車(燃料電池車)は短時間で燃料を充填でき、航続距離も長いという特徴があります。航続距離が長いことは運送業で普及した場合に効果が期待できるだけでなく、充填するための施設が少ない段階でも自動車の普及を進められやすい利点もあります。

低騒音・低振動

内燃機関ではなくモーターによって駆動するため、排気による騒音やエンジンの振動がないのも水素自動車(燃料電池車)の特徴です。快適性や周辺環境への配慮といった課題も同時にクリアされます。

水素自動車(燃料電池車)が抱える現状の課題とこれからの進化

このようにメリットの多い水素自動車(燃料電池車)ですが、課題も残っています。水素自動車(燃料電池車)の開発や普及について、どういった課題を乗り越えていかなければならないのでしょうか。

自動車の市販価格

燃料電池の製造にはレアメタルが使われるため製造コストが高く、電気式ハイブリッドカーと水素自動車(燃料電池車)では300万円の価格差があると試算されています。

価格差の縮小が、普及への大きな課題となります。

水素ステーションの設置数

水素ステーションの設置は進んでおらず、設置されている都道府県が限られているのが現状です。コストから考えると、水素自動車(燃料電池車)が普及しなければ水素ステーションの設置数も増えないという見方があります。

しかし、水素ステーションが生活圏内になければ購入には至らないため、先にステーションの整備が必要とも言えます。

燃料電池の耐久性

燃料電池は、乗用車の実用水準とされる20万kmの耐久性は達成しています。しかし、100万km程度使われることが想定されるタクシーやバス、トラックなどの水準に達するためにはさらなる耐久性向上が必要です。

業務用自動車や産業用車両への応用も考えた場合、耐久性は今後の課題となります。

充填時の流量に関する基準とルール

大型車は燃料を貯蔵する水素タンクも大型のものを必要とします。しかし、大型のタンクが容量いっぱいになるまで水素を高速充填すると、容器や充填器具の温度が上がりやすく危険です。その一方で、小型タンクを搭載する二輪車では既存の乗用車向けの充填プロトコルでは対応できないという問題があります。

こういった水素充填時における流量や充填量に合わせた基準やルールの整備も進めなければなりません。

水素製造時のCO2排出量が多い

水素自動車(燃料電池車)は走行時のCO2排出量は理論上ゼロにできるものの、水素を製造する過程では多量のCO2が排出されます。そのため、総合的に見るとCO2排出量がガソリン車より多くなってしまうという試算もあります。

温室効果ガスの削減効果を求めるのであれば、水素製造過程についての技術開発も必要です。

政府は燃料電池普及に向けたロードマップを策定

こういった課題に対し、経済産業省は「水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン」とし、水素・燃料電池戦略ロードマップを策定しています。

水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~(PDF)|経済産業省

車体の価格低減や水素ステーションの整備、水素供給価格の安定化、CO2フリー水素の活用に向けたカーボンリサイクルの実用化など、環境問題解決や経済効果が期待できる燃料電池普及を後押しする方策をまとめています。

水素自動車(燃料電池車)が次の自動車社会の主役になる可能性

水素自動車(燃料電池車)について、特徴やメリット、今後の課題などを紹介しました。

2030年をめどに、100年に一度の自動車産業の革命が起こるのではないかと言われています。その革命の中心にあるのは、「自動車が何によって走るのか」という原動力です。CO2排出量の削減や枯渇性資源に頼らない社会の実現といった世界的な課題があるなか水素自動車(燃料電池車)は次世代モビリティの主役候補として視線を浴びています。一方で、その実現には、さまざまな課題が立ちふさがっています。今後の水素自動車(燃料電池車)の技術開発と普及に向けた取り組みに、注目していく必要がありそうです。

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