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世界と日本のフロンガス規制-冷媒についての世界的な取り組み

世界と日本のフロンガス規制-冷媒についての世界的な取り組み

オゾン層を破壊することが判明しているフロンガスは特定フロンに指定され、日本ではすでに全面的に廃止されています。では、世界ではどういったフロンガスが使用され、それについてどのような規制があるのでしょうか。日本と世界で使われるフロンガスの種類と規制の比較、世界的な取り組みの流れについてご紹介します。

冷房・冷凍装置に欠かせない冷媒としてのフロンガス

多くの冷房・冷凍装置にとって、冷媒として働くフロンガスは欠かせないものです。しかし、過去に使われていたフロンガスはオゾン層を破壊することがわかり、段階を踏みながら、オゾン層に影響のないものへと切り替わってきました。

フロンガスにはどういった種類があり、オゾン層に影響のあるものはどの種類なのでしょうか。日本と世界で使用されているフロンガスやその規制の状況から確認していきましょう。

主な冷媒の種類

熱交換によって冷気を作る冷房・冷凍装置には、熱を受け渡す役割を務める冷媒が必要です。この重要な役割を持つ冷媒として、冷房・冷凍装置の歴史とともに長く使われてきたのがフロンガスです。

長く使われるなかで、効率や環境適合性などの課題をクリアすべく研究が進みました。現在ではフロンを含まないガスも含め、冷媒は、大きく5種類に分けられます。

  • クロロフルオロカーボン(CFC)
  • ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
  • ハイドロフルオロカーボン(HFC)
  • ハイドロフルオロオレフィン(HFO)
  • 冷媒として使えるフロン以外のガス

以上が現在までに冷媒として使われたガス、あるいは使われているガス、またこれからの冷媒の候補としてあげられているガスです。これら5種類の詳細については、以下の記事で詳しく紹介しています。

すっきりわかる!冷媒の5つの種類とそれぞれの特徴|NISSHA

日本で使用されているフロンガスの種類

前述の冷媒5種類のうち、「冷媒として使えるフロン以外のガス」以外の4種類はフロンガスですが、CFCとHCFCは特定フロンに指定され、CFCは2009年末に全廃されました。HCFCも先進国は2020年、途上国は2030年までに原則全廃の対象となっています。

HFOはまだ普及には至っておらず、現在日本で使用されているフロンガスは、HFCが主流です。なお、全廃対象のCFCとHCFCを冷媒として使用する現存の冷房・冷凍装置は、ガス補充や修理が困難なため、いずれ更新する必要があります。

世界で使用されているフロンガスの種類

では、世界ではどのようなフロンガスが冷媒として使われているのでしょうか。

世界で使われているフロンガスの種類は日本と同様で、前述の5種類に含まれます。また、CFCとHCFCが規制対象になっていることも同様です。

しかし、規制のスケジュールや方法については、国により日本と進行が異なります。オゾン層破壊物質について協議・採択されたモントリオール議定書では、HCFCの全廃期限について先進国は2020年、途上国は2030年と時期をずらして定めています。

また、EUには独自のフロン規制規則「Regulation (EU) 517/2014」が存在しており、こちらは漏洩防止も重視したものとなっているのが特徴です。さらにこのEUの規則をもとに、EU加盟国各国では、独自の対策を進めています。

米国では、米国環境保護局によってフロンガスおよび冷媒ガスのリスク評価が行われ、代替物質への転換推進や規制対象になる場合の情報提供などを行っています。

フロンガスの問題点と規制の動向

このように、世界で進み方や目標期限は異なるものの、オゾン層破壊につがなる特定フロンガスに対する規制は共通しています。特定フロンガスが規制に至るまでにはどういった経緯があり、どのような動向によって世界的な規制が実現したのでしょうか。

特定フロンCFCの規制と全廃までの流れ

フロンガス規制に関しての世界的な動きが見られるようになったのは、1970年代に遡ります。

それまで冷媒として当たり前に使い、廃棄や修理の際には大気に開放していたフロンガス(CFC)が、実はオゾン層を破壊していることが判明したのがこのころです。この事実は世界に衝撃を与え、地球に甚大な被害が起こる想像が飛び交うほどセンセーショナルなもので、多くの国が危機感を持ちました。

こういった危機感によって世界協調が生まれ、モントリオール議定書の策定につながります。この議定書は、ウィーン条約に基づいて策定された、オゾン層を破壊する物質の特定と規制を狙いとしたものです。

モントリオール議定書の発効により、当時使われていたCFCを特定フロンとして分類、世界的な取り組みとして全廃を決定しました。今でもオゾン層に対する影響度の指標として使うオゾン層破壊係数は、CFC-11を基準の1.0として定められています。

代替フロンHCFCも全廃へ

モントリオール議定書はこの後も段階的な改正と規制強化を図り、オゾン層に影響のある物質に対する規制基準として世界の指標となっています。

こういった段階的な規制のなかで、CFCに変わり代替フロンとして使われるようになったHCFCについても特定フロンに含めるようになりました。HCFCはCFCに対してオゾン層破壊係数が低いもののゼロではなく、先述のとおり、2020年または2030年までに全廃が決定しています。

現在はオゾン層破壊係数がゼロのHFCが主流となり、途上国では全廃期限の2030年までまだ10年もあるHCFCについても、世界全体で見ると生産量はすでに極少量となっています。

このように変化してきた冷媒の種類、世界的な取り組みと冷媒に求められる条件についてはこちらの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。

冷媒の働きと種類―これまでの歴史と次世代の冷媒|NISSHA

冷媒の新たな課題と規制の穴

こういった経緯から、現在ではオゾン破壊係数がゼロのHFCが主流として使われるようになっています。しかし、冷媒には新たな課題が浮上しています。

冷媒が影響を与えるのはオゾン層だけではない

モントリオール議定書を軸として世界的にフロンガスの規制が進み、オゾン層破壊物質にあたる冷媒の生産は世界全体を見ても概ね抑えられたと考えられます。

しかし、冷媒には新たな課題が浮上しています。それが、地球温暖化と温室効果ガスの問題です。温室効果ガスによる地球温暖化が問題視されるようになり、冷媒に使われるガスの地球温暖化係数も注目されるようになりました。地球温暖化係数とは、CO2と比較して何倍の温室効果を持っているかを表した数値です。

HCFCに変わり使われるようになった「二代目代替フロン」とも呼べるHFCのうち、主流として使われていたR-410Aは地球温暖化係数が2090とCO2の2000倍もの温室効果を持っています。

そこで、R-410Aに変わり使われるようになったのが比較的地球温暖化係数の低いR-32です。しかし、R-32も地球温暖化係数は675と、まだまだ低いとはいえません。こうした地球温暖化に関する課題も踏まえて、今後は冷媒を考えていく必要があります。

フロン規制年表

地球温暖化係数と温室効果ガス、冷媒との関係についてはこちらで詳しくご紹介しています。

地球温暖化係数(GWP)とは?―世界の課題「温室効果」の程度を知る値|NISSHA

モントリオール議定書と京都議定書の隙間にある穴

オゾン層破壊効果のない冷媒の普及が実現した今、冷媒を使ううえで世界の次の課題となるのは、地球温暖化への影響です。この地球温暖化という課題に対しては、温室効果ガスについての世界的な取り組みを策定した京都議定書に則って進めることになります。

このようにまだ多くの課題が残る冷媒について、モントリオール議定書と京都議定書、2つの協定の内容を考慮しながら次世代の冷媒を開発し普及していかなければなりません。しかし、この2つの協定の隙間に存在する「穴」が問題となります。

モントリオール議定書ではCFCとHCFCについて生産量と消費量を規制していますが、すでに容器や機器に充填されているガスについて排出に関する規制はありません。途上国のHCFC全廃期限は2030年で、わずかとはいえHCFCは生産されているうえに、機器のなかにはHCFCを使用するものがまだ多く存在すると考えられます。これらが大気中に開放されると、温室効果の高いガスが大量に放出されることになります。

京都議定書では途上国に対する温室効果ガスの削減義務はなく、HCFCの大気開放、HFCの漏洩などがこれからの課題となる可能性は大いに考えられます。

こういった課題を受け、EUでは漏洩対策を盛り込んだ独自の規制で、日本ではフロン排出抑制法で、フロンガスが大気中に放出されることを防止しています。このような漏洩も含めた対策が、今後の世界の課題となっていくのではないでしょうか。

フロン排出抑制法についてはこちらで詳しく解説しています。漏洩の防止とその対策について知りたい方はご参照ください。

フロン排出抑制法の改正と内容―フロン活用と地球環境のバランスを保つには|NISSHA

冷媒との上手な付き合い方を探すことがこれからの課題

これまではエアコンの普及率がそれほど高くなかった欧州においてエアコン導入が加速的に進み、途上国でも普及が進んでいます。また、世界的なコールドチェーンの発展により途上国でも冷凍食品が広がり、冷蔵倉庫や冷凍倉庫が導入されています。こういった背景もあり、冷媒の重要度は高くなる一方で、その扱い方と地球環境への影響も考えなければなりません。これからは地球温暖化係数が低く冷媒として使えるガスを研究するのと同時に、冷媒を大気に放出しないための取り組みが求められます。地球環境対策と漏洩防止、取り扱いに関する規制、それらのバランスをとって、冷媒と上手に付き合っていく方法を模索していく必要があるのではないでしょうか。

製品紹介

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