ブログ

めっきの目的と種類‐表面処理から電子部品としての機能まで

めっきの目的と種類‐表面処理から電子部品としての機能まで

めっきは表面をコーティングするものとだけ認識している方も多いかもしれませんが、めっきの目的や機能はそれだけではありません。めっきとはどのようなものか、また、その目的と種類をご紹介します。

「めっき」とは‐塗金から発展した技術

めっきとは、金属の薄い膜をかぶせて製品のサビや劣化、摩耗を防ぎながら装飾効果も得られる技術の総称です。めっきは片仮名でメッキと書かれることもありますが、日本で生まれた言葉でありれっきとした日本語ですので、平仮名で書くのが本来の表記です。

めっきは仏教の伝来とともに伝わった技術と言われています。日本に仏教が伝わったとき、仏像を金色に塗るために始まったのが「塗金(ときん)」という装飾法です。当時行われていた技法では、金を一度水銀に溶かす工程があり、このとき金が見えなくなることから「滅金(めっきん)」と呼ばれるようになりました。これが口頭で伝わるうちに「めっき」へ変わったとされています。めっきには「鍍金」という字が当てられましたが、常用漢字の整理に伴い平仮名で「めっき」と表記するのが一般的になりました。

このように、めっきは金を塗ることで表面に薄い膜を作ることから始まった技術で、金属の膜を作り保護・装飾の役割を保つ技術全体をそう呼ぶようになったのです。

「めっき」の異なる三つの機能

このように、初めは装飾の意味合いが強かっためっきですが、今では三つの目的のために使い分けられています。その三つとは、防食・装飾・機能付与です。それぞれを詳しく見てみましょう。

防食‐腐食やサビを防ぐ

現代においてめっきの多くは、腐食やサビを防ぐ目的で行われています。

例えば鉄は、むき出しのままでは簡単な条件で表面にサビが発生してしまいます。さらにそのままサビが内部まで進行すると、強度も著しく低下してしまいます。このように弱点のある素材を、別の素材で覆うことにより保護するのもめっきの目的の一つです。

こういった腐食やサビを防ぐ目的で施されるめっきを、防食めっき、または、防錆(ぼうせい)めっきと言います。

装飾‐見た目を美しくする

防食めっきはサビを防ぐことにより見た目の劣化を防ぎますが、素材の本来の姿から見た目をグレードアップする目的で行われるめっきもあります。それが装飾めっきです。

「めっきが剥がれる」という比喩があるように、装飾めっきには見た目を良くする効果があります。金めっきや銀めっきは古くから行われた装飾目的のめっきで、現代ではこのほかにも半永久的な光沢を持たせるものも数種類あります。こういった装飾めっきは金属だけでなくプラスチックにかけることもでき、プラスチックに金属のような光沢を与えることも可能です。

また、貴金属をめっきすることで付加価値を高めるという目的で行われる場合もあります。

機能付与‐特殊な性質を加える

現代の産業に深く関わっているめっきの使い方が、この機能めっきです。機能めっきは、素材の保護や美観向上のためではなく、機能性を付与する目的で行われるものです。

めっきの皮膜にはさまざまな材質を使うことができ、それぞれに特性があります。この特性を生かし、本来はなかった機能を付与することができるのです。電気的な特性を与えたり、機械的な特性を向上させたり、このほかにも化学的特性・光学特性・熱的特性などを付与することが可能です。

例えばパソコンの中の部品として使われているメモリRAMを見てみると、この部品だけでも3種類の機能めっきが施されています。接点には金めっきにより電気的特性が、ICが取り付けられている部分にはニッケルめっきによりはんだ付け性が向上。また、配線パターンを形成している部分には銅めっきが使われています。

このように、機能めっきはさまざまな場所で活躍し、現代の技術と産業を支えています。

「めっき」の種類と多様化しためっきの特徴

めっきは美しさや保護性能、そのほかにさまざまな機能を付与するため多様化し発展してきました。めっきにはどのような種類と手法があるのか、代表的なものをご紹介します。

電気めっき

電気めっきは、電気化学的に別の素材を電着させるめっきの方法です。

  • 銀めっき
    銀白色の美しい装飾性があり、はんだ付け性・導電性といった機能性にも優れています。
  • 金めっき
    金特有の美しさは装飾めっきとして長い歴史があります。また、金は化学的に安定している物質で、耐食性に優れているほか導電性・熱伝導性・はんだ付け性にも優れています。経年による変化が少なく表面抵抗値の低下が小さいため接点に使われます。
  • 亜鉛めっき

大気中では耐食性が高いものの、水に直接触れると鉄よりサビの進行が早いという性質を持つ亜鉛。腐食を防ぐクロメート処理を施すことで耐食性を高めます。
クロメート処理には有害な六価クロムを含む有色(黄色)クロメート・黒色クロメート、六価クロムを含まないユニクロ・三価クロム化成処理・黒色三価クロム化成処理などがあります。

  • 黒クロムめっき

耐食性や塗膜密着性などを高めます。また、漆黒色の外観は用途により装飾の意味で使われるほか、反射防止のため照明の方向を絞るフラップに使われることもあります。黒クロムめっきには六価クロムは含まれません。

  • 硬質クロムめっき
    数あるめっきの種類の中でも極めて高い硬度を持ち、機械的特性に優れています。シリンダーやピストン、ベアリングなどの摺動(しゅうどう)部品、金型部品や切削工具などに使われています。めっき膜を厚く盛ることもでき、再生加工ができる点も特徴の一つです。
  • 光沢ニッケル・クロムめっき
    半永久的に光沢を失わないことが特徴で、装飾めっきの代表格とも言えるめっきです。また、表面に酸化皮膜を形成するため耐食性にも優れます。金属だけでなくプラスチック製品に対しても施され、光沢を付与する目的で幅広く使われています。

無電解めっき

めっき膜として付けたい金属を含む溶液を作り、溶液中に製品を浸すことで化学反応を起こす表面処理の方法です。

  • 無電解ニッケルめっき
    電気めっきは電流分布の影響により厚みにバラツキが出たりめっきがつかない部分があったりします。しかし、無電解ニッケルめっきは複雑な形状の製品でも全体にめっきを施すことが可能です。
    耐食性・耐摩耗性に優れ、めっき膜の均一性に優れているため寸法公差の厳しい製品に対して使われます。表現できる色の種類は少ないことから装飾性目的で施されることはほぼありません。液を高温維持しなければならないために特殊な処理槽が必要となります。

化成処理

化学的処理を行い金属表面に化合物を生成する方法です。

  • アロジン処理
    アルミにクロメート処理をしたものはアロジンと呼ばれています。被膜は薄く複雑形状にも対応できることから放熱板に使われます。また、被膜の薄さから装飾部品を塗装する前の下処理としても使われています。
  • フェルマイト処理
    通称黒染めと呼ばれる四三酸化鉄皮膜です。耐食性に優れ、黒色が必要な部分に装飾目的で使われるほか反射防止性の必要な部分にも使われます。めっきを施す製品の素材自体が反応して被膜となるため、寸法が変わらないという特徴があります。
  • リン酸塩皮膜処理
    パーカー処理、リューブライト処理と呼ばれるものがこのリン酸塩皮膜処理です。素材自体の表層が反応して皮膜形成するため、寸法精度に優れています。使うめっき素材により塗膜密着性・耐摩耗性・接着性など特性が変わり、全体的に耐食性に優れています。

真空めっき

容器内を真空にし、めっきしたい材料の金属や窒化物、炭化物などをイオン化またはガス化して製品表面に蒸着させる方法です。

  • 物理蒸着(PVD)
    めっき被膜にしたい材料を蒸発させ、蒸気として堆積させることで製品に皮膜を形成します。一般的な蒸着法のほか、蒸発粒子をプラズマ中に通すことで帯電させ蒸着させるイオンスプレーディング、さらにそれを高エネルギーで衝突させるスパッタリングという手法もあります。

気相めっき

めっき被膜にしたい材料を気化させた状態で高温の被めっき素材に吹きかけ、高温化学反応によってめっき皮膜を形成する方法です。

  • 化学蒸着(CVD)
    極めて多様な種類のめっき皮膜形成が可能で、金属・非金属・合金のめっきが可能です。電気めっきや無電解めっきでは困難なシリコンやカーボン、チタン、タングステン、モリブテンなどのめっきも可能です。気化しためっき材料を被めっき素材に近づけるためのキャリアガスを使い分けることにより、めっき材料を窒化物や炭化物にしたうえで超硬や高融点といった機能を付与もできます。

あらゆる場所で活躍しているめっき

めっきの目的や機能、種類についてご紹介しました。

装飾の目的から始まっためっきは、耐食性を付与する目的へと発展し、今ではさまざまな機能を持たせるために活用されています。さまざまな用途を持つめっきは、今後もあらゆるシーンで活躍していくでしょう。

関連記事

水素脆性とは?原因から対策までを徹底解説

水素脆性の試験方法―遅れ破壊の可能性を把握するために

水素脆化と水素侵食―水素が引き起こす2つの損傷現象

製品紹介

水素脆性の研究に欠かせない水素濃度分析装置

鉄鋼からの水素放出量を10ppbの低濃度から検出。
-100℃~800℃の広い温度域の大気圧環境下で水素濃度の測定が可能。

センサーガスクロマトグラフ