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追熟を利用して消費者に食べごろの果物を届けるには?

追熟を利用して消費者に食べごろの果物を届けるには?

果物のなかには、置いておくことでさらに甘みが増して柔らかくなり、おいしく食べられるようになるものがあります。こういった作用を追熟と呼びますが、この追熟はなぜ起こるのでしょうか。追熟とはどのような作用によって起こるものなのか、追熟は果物の流通にどう応用されているのかをご紹介します。

果物の追熟とは

果物が樹になったまま食べごろになるまで熟すことを成熟、樹から切り離した状態で熟すことを追熟といいます。この追熟という作用はどのようにして起こり、どのように利用されているのでしょうか。

硬いうちに収穫しているのに、店頭では熟しているのはなぜ?

果物のなかには、まだ熟していない硬いうちに収穫し、保管や流通を経て店頭に並ぶときに完熟状態となっているものがあります。この仕組みに利用されているのが追熟の作用です。

追熟を利用した流通では、一定期間貯蔵したり出荷・運搬の時間を調整したりすることで、ちょうど食べごろの状態で店頭に並ぶように工夫がされています。遠く離れた産地から売り場まで果物を届けられる現代の流通において、追熟を利用したタイミング調整は不可欠なものとなっています。

エチレンによるエイジングコントロール

この追熟という仕組みは、エチレンガスが作用することで起こっています。エチレンはポリ袋の原料となるポリエチレンの印象から、化学的に合成された物質だと思われることもありますが、自然界に存在する物質です。植物ホルモンの一種でもあり、果物や多くの植物が自らエチレンを生成しガスとして放出しています。

エチレンの作用として代表的なのが、果物の成熟を誘導する働きです。エチレンは多くの植物に対し老化を促進する作用があることがわかっていて、エイジングガスとも呼ばれています。エチレンによるエイジング作用をコントロールすることで、追熟を行いながら保管・運搬し全国の売り場まで食べごろの果物を届けることが可能になっているのです。

追熟する果物としない果物の違い

前述のように、追熟を利用することで果物は広範囲への流通が可能になり、食べごろの状態で店頭に並べることができるようになっています。しかし、すべての果物に追熟が起こるわけではなく、起こらない果物もあります。

追熟の起こる果物、起こらない果物の2つの型は、次のように分けられています。

クライマクテリック型

追熟ができる果物はクライマクテリック型に分類されます。

成熟期の後半や追熟中に、果物の呼吸量が急激に増加する現象をクライマクテリックライズといいます。このクライマクテリックライズが起こる引き金となっているのがエチレンの働きです。

クライマクテリック型の果物は、熟成するとエチレンの発生量が1000倍にもなり、これによって呼吸量が増大し風味や色、柔らかさが変化します。このとき果物のなかでは、貯えられているでん粉が酵素分解され、糖に変わることで甘みが増す現象が起きています。

クライマクテリック型の果物はエチレン発生の増加に伴い追熟が起こりますが、熟成がピークに達すると急速に風味や食感が損なわれます。そのため、狙ったタイミングで完熟状態にするためには、エチレン濃度や酸素濃度を調整することによって追熟の進行速度をコントロールする必要があります。

バナナ、桃、りんご、ナシ、メロン、マンゴー、アボカド、トマトなどはクライマクテリック型で、追熟が起こる果物です。これらの果物は、貯蔵中の雰囲気のエチレン濃度を高くすることでより早く追熟を進めることができます。そのため、エチレンを多く出している完熟状態の果物を、まだ熟していない果物と同一環境内に置くことで、追熟を促すことも可能です。

非クライマクテリック型

非クライマクテリック型はノンクライマクテリック型ともいい、成熟が緩やかで劇的な変化が起こらない果物がこの型にあてはまります。

果物がエチレンガスをほとんど発生させないためで、これにより呼吸量も増加しません。また成熟過程で、すでにでん粉は糖に酵素分解されているため、収穫後に甘みが増えることもありません。

追熟が起こらないため、成熟を待って収穫し、収穫後の新鮮な状態が食べごろとなります。そのため、クライマクテリック型と異なり、鮮度を保った状態でのできる限り早い流通が求められます。

柑橘類やベリー類などが非クライマクテリック型です。

追熟を応用して食べごろの果物を店頭に

クライマクテリック型の果物は追熟を応用することで、完熟になる前の鮮度を保ったまま流通し、完熟の状態で販売することができます。このとき、収穫から完熟までの進行速度を決める要素となるのが、エチレンです。

そのため、クライマクテリック型の果物では、その流通過程においてエチレンによるエイジング作用のコントロールを行う工夫がされています。例えばエチレン濃度を下げることで追熟が進むのを緩やかにするため、大型の冷蔵貯蔵庫でエチレンを除去するエチレンカット機が使われたり、貯蔵庫でエチレン除去機能付き冷蔵加湿機が使われたりといったことです。

エチレン濃度の測定が必要

このようにエチレン濃度のコントロールをするためには、貯蔵庫内や果物の雰囲気におけるエチレン濃度を把握する必要があります。そこで必要になるのが、エチレン濃度の測定です。

エチレン測定の方法は大きく2つに分けられます。その場のサンプルガスを採取し測定装置のある場所に運び測定する方法と、その場でリアルタイムに測定する方法です。この2つの方法は、精度とリアルタイム性のどちらを重視するかによって優位性が変わります。

大型の測定装置は多くの成分を高精度かつ同時に測定できますが、装置の移動は現実的ではなく、実地での測定は不可能です。そのため、サンプルガスの採取から検査結果が出るまで時間を要し、リアルタイムな測定はできません。

一方、エチレンガスを含めた数種類の成分測定に目的を絞った測定装置では、コンパクトで持ち運び可能なものもあります。貯蔵庫や運搬車両の内部に装置を持ち込むことができ、その場でその時のエチレン濃度を測定できます。また、大型の測定装置のように農業研究分野で求められるような超高精度測定はできませんが、流通分野でエチレンコントロールをするためには十分な精度です。

こういった携行性に優れたものは現地でのリアルタイムな濃度測定ができ、経時変化の観察も可能なことから生産者や流通業者での導入が進んでいます。

エチレンガスの測定装置について詳しくは、以下の記事をご参照ください。

野菜や果物に深くかかわるエチレンの働きと応用、その測定装置を紹介!|NISSHA

追熟を研究することで広がった流通の可能性

収穫後に果物がさらに熟す追熟の作用とその仕組み、追熟の有無によって分けられる果物の分類、追熟の応用に重要なエチレン測定などについてご紹介しました。

クライマクテリック型の果物は追熟が可能なため、それを応用して収穫から出荷、店頭に並ぶまでの時間を調整することで食べごろの果物を販売することができます。こういった追熟に関する研究が、果物の流通の可能性を大きく広げ、食文化の発展にもつながったといえます。

追熟の応用には、追熟と深くかかわるエチレンについて知る必要があり、その濃度を把握するための測定が不可欠です。リアルタイムの測定によるエチレンの増減、貯蔵と運搬の時間調整によって追熟をコントロールし、消費者に食べごろの果物が届けられているのです。

製品紹介

植物が放出する微量のエチレンガスをリアルタイムに検出

10ppbの微量エチレンガスも検出。およそ10分間隔でエチレン濃度の経時変化も分析可能。

センサーガスクロマトグラフ

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