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水素燃料電池の開発はセンサーの進化が鍵をにぎる―水素ディテクターの重要性

水素燃料電池の開発はセンサーの進化が鍵をにぎる―水素ディテクターの重要性

2030年度を目度にガソリンエンジン車の新車販売に対する規制が検討されているなか、水素自動車(燃料電池車)に対する期待が一層高まっています。水素燃料電池についての基本的構造や特徴をまとめたブログ記事は多くありますが、この記事では、さらに「その先」を求める方に向けた内容をまとめました。ガスセンサーのプロであるNISSHAエフアイエスが「センサー」を切り口に、これからの水素燃料電池と必要な技術を考えます。

水素燃料電池とは?構造とメリットをおさらい

2030年を目標に開発が加速すると予想される水素燃料電池とはどのような仕組みのもので、どういった用途で活用されることが期待されているのでしょうか。あらためて水素燃料電池についておさらいし、そのメリットをまとめてみます。

水素自動車(燃料電池車)の動力源となる燃料電池とは

水素自動車と呼ばれる自動車は、原動力の方式によって大きく2種類に分けられます。1つは水素を直接燃焼させるエンジンによって走る水素エンジン車、もう1つは水素を使って発電した電気エネルギーからモーターを回すことによって走る燃料電池車です。

この水素自動車(燃料電池車)に使われる燃料電池は、家庭用自動車だけでなくバスやタクシー、大型トラック、産業車両や建設機械などでの使用に向けても開発が進んでいます。また、非常用電源やモバイルバッテリーといった用途での応用も可能とされています。

燃料電池の原理としては、水の電気分解を逆にしたものと考えると理解しやすいのではないでしょうか。水に電気を流すと水素と酸素に分解されます。これを逆に水素と酸素がある環境で反応させることで、水が生成されると同時に電子が移動し、電流を生み出すのが燃料電池の仕組みです。

酸素は空気中に存在するものを使うため、燃料電池には水素と空気を供給することになります。水素の補充方法にはいくつかの方式がありますが、現在有力視されているのは水素ガスをタンクに充填するというシンプルな方法です。このほか、水素以外の燃料を補充したうえで、それを車載改質器によって改質して水素を製造する方法や、水素を吸蔵した金属を車載し、そこから水素を取り出す方法などが可能性として残っています。

水素自動車(燃料電池車)のメリット

水素を燃料として使う水素自動車(燃料電池車)の最大のメリットは、排気ガスをゼロにできる点といえるでしょう。燃料電池において電気を作る過程で排出されるのは、水素と酸素の反応によって生成される水だけです。これは温室効果ガス削減に大きな効果があると期待されています。

また、ガソリンエンジンに比べて高いエネルギー効率が実現可能という点も、燃料電池が期待される要因です。ガソリンエンジン車に比べ水素自動車(燃料電池車)のエネルギー効率は約2倍と考えられており、家庭での燃料費から国家エネルギー戦略まで大きな経済効果があるとされています。

バッテリーに充電した電気のみで走る電気自動車(EV)は、長い充電時間と航続距離に対する不安が課題です。

これに対し水素自動車(燃料電池車)は外部から充電するわけではなく、水素から電気を作る仕組みのため、ケーブルを接続しての充電時間は必要ありません。燃料として水素を充填する時間だけで済むため、従来のエンジン車と同様の使い方ができると考えられています。これに加えて航続距離も長いことから、運送業での利用も想定できます。

このほか、上下運動を基本とするエンジンを使わないため振動が少なく、機関内での燃焼もないため、騒音も抑えられます。

快適性や周辺環境配慮の面でもメリットが大きい仕組みといえます。

水素燃料電池に使われているセンサー

このようにメリットが多く期待の大きい燃料電池ですが、実際に動くためにはさまざまな周辺補機も必要となります。安全性を確保しながら理想のエネルギー効率を実現するためには、こういった補機も含めあらゆる部分でどういった動きをするのかコントロールしなければなりません。そのために必要なのが、現状からデータを得るための各種センサーです。

水素自動車(燃料電池車)に必要となる主なセンサーとしては、次のようなものがあります。

水素ディテクター

水素漏れを検出するため水素自動車(燃料電池車)には必須のセンサーです。

水素自動車(燃料電池車)の国際規格では水素ガスの漏れを検知するセンサーの装着が義務付けられています。また、国交省の水素ガスを燃料とする水素自動車(燃料電池車)の基準としても、水素ディテクターのような漏れ検知のセンサーを装備するよう定められています。

水素タンク温度センサー

水素自動車(燃料電池車)は水素を燃料として補給する必要がありますが、補給方法には課題もあります。

EVに比べて短時間で充填可能という点は水素自動車(燃料電池車)のメリットですが、水素を高速充填すると水素分子の摩擦や圧縮により水素タンクの温度が上昇してしまいます。可燃性ガスである水素を貯蔵するタンクの温度が上がることは安全性を考えても好ましくありません。

そこで、水素タンクの温度管理を可能にする必要があります。その際に必要になるのが温度センサーです。水素タンクの温度を調整しながら充填することで安全性が確保できるとともに充填速度の最適化ができます。一律で低速充填をする必要がなくなり、充填時間も短くすることが可能です。

燃料フローセンサー

燃料電池で理想の発電を行うためには、水素と酸素の供給量が最適である必要があります。

このとき、酸素は空気中から供給されますが水素の流量は調節しなければなりません。その流量を検知するのがフローセンサーです。

フローセンサーの役割はエネルギー効率にも直結するため、微流量のガスを高精度で測定することが求められます。

水素ディテクターの検知方式の種類と特徴

水素ディテクターは国際規格でも装着が義務化されており、紹介したセンサーのなかでも、水素自動車(燃料電池車)において最も重要なセンサーといえます。

一言に水素ディテクターといっても、その検知方式には次のようにいくつかの種類があります。

接触燃焼式

検知素子は貴金属線コイル、酸化触媒、アルミナ担体から構成されます。検知素子の表面で可燃性ガスを燃焼させ、素子の温度が上昇することにより変動するコイルの抵抗値を測定することでガス濃度を検知する方式です。

1000ppm~4%の範囲で検知可能で、応答性は3秒ほどです。

気体熱伝導式

検知素子に対象ガスが触れたとき、ガス固有の熱伝導率によって熱放散の状態が変化し素子温度も変化します。それにより素子内部の貴金属線コイルの抵抗値が変わり、この抵抗値の変化をブリッジ回路によって電圧として検出する方式です。

検出範囲は100ppm~100%、応答性は3秒~20秒程度となります。

固体電気化学式

固体電解質の安定化ジルコニアが持つ特有の性質を応用した検知方式です。電極を取り付けた安定化ジルコニアの内部と外部でガス濃度の違いが生じると、電極に起電力が発生します。この電圧を測定して検知します。

検知範囲は1000ppm~10%、応答性は10秒~30秒です。

Pd触媒水素吸蔵式

水素吸蔵材としてパラジウム(Pd)を使用し、パラジウムが水素を吸蔵すると電気抵抗が大きくなる性質を応用した方式です。

検知範囲は1000ppm~4%、応答性は5秒~10秒です。

NISSHAエフアイエスの水素ディテクターの特徴

水素ディテクターの一例として、NISSHAエフアイエスの水素ディテクターをご紹介します。

水素ディテクター

NISSHAエフアイエスの水素ディテクターは、上記の検知方式のなかで接触燃焼式を採用しています。接触燃焼式は応答性に優れることから、安全性の確保を主目的とする水素自動車(燃料電池車)向け水素ディテクターに適している方式です。

NISSHAエフアイエスの水素ディテクターは、素子の熱容量が小さく検知素子と補償素子の熱容量差が小さいため、安定値に達するまで1秒以内と起動応答特性が非常に早いことも、水素ディテクターとしての信頼性を高めています。

また、他のガスの影響を受けず、低濃度から高濃度まで高精度に水素を検出できます。その精度は±5%の範囲内と高い信頼性があります。

車載での長期間使用を想定し、感ガス素子の表面を大きくして素子全体で水素燃焼することにより、シリコン耐久性を向上させ、さらに、車載用に求められる長期安定性を実現しています。

NISSHAエフアイエスの水素ディテクターについてさらに詳しい情報は、つぎのバナーから製品ページをご覧ください。

水素ディテクター

開発が加速する水素燃料電池

燃料電池の実用化を左右するとも言える「センサー」を切り口に、水素燃料電池の技術をまとめました。今後、水素自動車(燃料電池車)は実用化と普及に向けさらに開発が加速していくと予想されます。各部で使われるセンサーが要素技術として重要な役割を持つことは確実といえるでしょう。水素自動車(燃料電池車)の開発はセンサーの進化にもかかっていると言っても過言ではないのではないでしょうか。

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